優美に、清らかに、つい見惚れてしまう現代へ続いてきた酒田舞娘とは?

ANA SHONAI BLUE Ambassador(庄内に移住しANAに乗務しながら庄内地区で活動する客室乗務員)がお届けする庄内レポート

山形県庄内、昔から商人の街として栄えた酒田。そこには、現在も現役の「酒田舞娘」が艶やかで優美に舞い続けているのをご存じですか?江戸時代からの北前船の交易によって栄え、文化や歴史の香りが残る湊町酒田、そして当時の栄華を今も伝える相馬樓、酒田舞娘の楽しみ方、聞けば聞くほど、見れば見るほど虜になってしまう魅力をお伝えします。

この記事を読んで、あなたもこばえて酒田!(酒田の方言で庄内に来れば良いのに!)

まずは、酒田の歴史から。北前船がもたらした酒田湊の繁栄

江戸時代から大正時代にかけて、北前船の往来で「北国(ほっこく)一」と言われるほど賑わった商人の街、酒田。今でも市内の至る所で北前文化の面影を垣間見ることができます。そもそも、北前船・北前文化とはなんでしょうか。江戸時代から遡ってご紹介します。

相馬樓①

徳川家康によって、天下が統一されて以降、平穏な世が築かれていた江戸時代。

徳川幕府のお膝元である江戸は、町の発展と人口増加が急激にすすみ、江戸周辺の地域だけでは生活物資を十分に調達できなくなりました。そのため、幕府は全国諸藩へ資源の調達を命じたのですが、当時の酒田(庄内藩)は最上川の舟運で内陸部の米を集めることが出来たため、江戸へ米を運ぶ役割を命ぜられました。

そこで繁栄したのが、大量の荷物を積んで、海を往来することができる北前船です。北前船の中でも大型のものは千石船とも呼ばれ、一度に1千石の米を積むことができました。一石は150kgで当時の成人男性が1年で食べるお米の量と言われています。貴重なお米を安全確実に江戸に運ぶために、河村瑞賢が1672年に整備した海路が酒田から日本海を南下して瀬戸内海、大阪を経由する「西廻り航路」です。

相馬樓②

北前船は幕府の御用米を積むための船ですが、船の空いているスペースには自分たちの荷物を積み、寄港地で商売することが許可されていました。

酒田湊の船主は、庄内藩からの御用米のほかに最上川を下ってきたベニバナや染物の原料となるアオサ、味噌や醤油などを積み、航路上の寄港地で交易を行いました。各寄港地での取引相場は、各地を巡る船頭でなくては把握できない情報でしたので、各寄港地の特産品を安く買い、他の寄港地で高く売ることが出来た北前船の交易は、莫大な富をもたらしました。

北前船の始発湊である酒田には、そういった北前船の船主たちがたくさんいたため、酒田は湊町として急速に発展していきました。

また、御用米を幕府に納めた後、軽くなった船を安定させるため、能登や越前、兵庫などからバランサーとして積まれた石が「綿積石」です。酒田市内の神社仏閣の石畳や階段、石碑などをみると、北前船で運ばれた越前の青石や兵庫の御影石が使われており、当時の歴史や酒田湊の賑わいを感じることができます。

相馬樓③

「西廻り航路」では酒田と江戸を往来する際に、京都や大坂を経由しました。そのため、華やかな上方の調理法、建築様式、経済情報などの上方文化が酒田にもたらされ、地元の文化と合わさった独自の北前文化として昇華されたのです。現在でも、あんかけうどん、南禅寺豆腐、丸もちなどの食材のほか、歌の歌詞にも北前文化が受け継がれています。

当時酒田の湊に北前船が入ると、紋付羽織袴に酒樽や料理を持った街の主人たちが入船祝いの儀を執り行ったそうです。かつての酒田は、道を歩けば人の肩と肩がぶつかるほど賑わっていたんだとか。

ようこそ、相馬樓へ!

相馬樓④

酒田には上方の流れをくむ「料亭文化」が現存しています。時の豪商達に愛され、料亭文化の頂点にあったのが現在の相馬樓の前身に当たる、当時の「相馬屋」です。

料亭「相馬屋」は江戸時代文化5年(1808)に創業され、210年余りの歴史と伝統があります。明治27年の庄内地震で母屋は焼失してしまいますが、直後に焼け残った蔵を取り囲むようにして回廊式の母屋が建てられ、大料亭としての歴史は続き、現在は「舞娘茶屋 相馬樓/竹久夢二美術館」として、酒田舞娘とお雛様の複合観光施設として粋な酒田の伝統を伝えています。

相馬樓⑤

今回は美しい館内の中でも、酒田舞妓さんのオススメスポットをお伺いしてきました。ご案内頂いたのは、鈴涼(すずりょう)さん(写真右)と鈴千代(すずちよ)さん(写真左)です。

相馬樓⑥

酒田舞娘おすすめスポット1つ目、こちらの光が入って色合いが美しいステンドガラスは、22年前に相馬樓が観光施設として生まれ変わった際に作られたもの。館内1階の一番奥にあります。そのほかの館内の窓ガラスは昔の状態のままのものも多く、最古で明治28年から使用されているものも。まさに新旧の融合です。

相馬樓⑦

酒田舞娘おすすめスポット2つ目は、2階に上がり、椿が全面に広がるこちらの襖。相馬樓は平成12年、戯遊詩画人”泉椿魚(いずみ ちんぎょ)”先生により、修復工事のプロデュースが行われ、現在酒田舞娘とお雛様の融合施設として運営されており、ひな壇をイメージした館内は赤い絨毯、ぼんぼりなど「赤」が1つの大きなデザインのキーワードとなっております。そんな艶やかな赤が美しい椿が全面に広がる襖は、相馬樓の優美な雰囲気にピッタリ。ぜひ写真にも納めて下さいね。

優美に、清らかに、つい見惚れてしまう現代へ続いてきた酒田舞娘とは?

相馬樓⑧

「舞妓」と聞くと、京都の料亭などで演舞をする舞妓さんを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。冒頭の内容のように、江戸時代、船が沢山着く湊町として栄え、商人や船乗りが滞在中に町を楽しむという粋な文化があった酒田。同様に、そのようなお客様をもてなし、酒田を楽しんで頂くためにと、芸妓さんも沢山いたのです。

またそのような姿に憧れた娘達が、当時は「舞妓」という呼び方ではありませんでしたが、「半玉」と呼ばれ、芸妓見習いとして活躍し、賑わいを見せておりました。

相馬樓⑨

時代と共にその形態は変化し、料亭でおもてなしをする姿はなくなってしまいましたが、酒田の花町としての文化を継承し、酒田市の看板娘、観光のシンボルとして1990年に現代版「酒田舞娘」が復活しました。

相馬樓⑩

「文化はその時代に合わなくなるから進化する。時代に合わせた、現代の舞娘の在り方を!」と話す、ご自身も酒田舞娘3期生で、現在は舞娘の育成も担う小鈴さん。現在、酒田舞娘は18歳〜25歳まで。その後は芸妓としての道を目指します。

残すべきものと、残さなくて良いもののバランスを取りながら、新しい時代に馴染み、皆に愛される酒田舞娘を目指し、日々相馬樓や、観光イベント、台湾やパリなど、世界中でも演舞を披露しております。時代に合わせ働き易く、長く活躍できるようにと、株式会社として運営され、社員である酒田舞娘さんは日々様々なお稽古に励んでいるとのこと。

そのような背景を知ってから酒田へ訪れると、舞で魅了されるのはもちろんですが、ついつい応援したくなるのも魅力の一つかも知れません。

カフェに、演舞宴に、美術館に、相馬樓には楽しみ方が沢山!

相馬樓11

相馬樓には、予約不要で入樓チケット(大人1000円税込)を購入し、館内を自由に見学できる他、事前予約をすれば、酒田舞娘の優美な舞を間近で鑑賞することができ、さらには記念撮影もできる演舞鑑賞付入樓チケット(大人1800円税込)もあります。

また、美味しいお食事を頂きながら酒田舞娘の演舞を鑑賞することのできるスペシャルな舞娘御膳チケットも販売されています。

相馬樓12
舞娘懐石(大人5,500円税込)

庄内の魅力を2段のお重にたっぷり詰め込んだ贅沢な1品。庄内に初めて来たなら、これを食べれば間違いないです。季節によって旬の食材の移り変わりが早いのが特徴の庄内地域、季節によって内容も異なりますので、いつ食べても楽しめるのも嬉しいポイント。

相馬樓13
特大うな重(8,000円税込)

相馬樓の斜向かいにある明治10年創業の次郎兵衛の名物を頂く頃ができます。特大サイズの贅沢なうなぎを秘伝のタレに絡め、お米の1粒1粒が大きく、ほのかな甘味が特徴の庄内が誇る「つや姫」の上に溢れんばかりに乗せた一品。豪華な演舞を見ながら、うなぎを口に運ぶ、目にも口にも贅沢なひとときを過ごすことができます。

事前予約制で、予約は随時公式HP、またはお電話から受け付けております。

もっとカジュアルに相馬樓を楽しみたい方におすすめなのが、「まいこカフェ」です。
雰囲気溢れる館内でお抹茶や、コーヒーなど、ほっとひと息つけるメニューを頂くこともできます。

相馬樓14
ぜんざい(700円税込)

相馬樓15
こばえちゃ(抹茶)(600円税込)

なんと嬉しいのは、注文すると酒田舞娘と記念撮影もすることができること。演舞ももちろん美しいのですが、所作やお話のされ方など、近くでお会いするとますますうっとり見惚れてしまいます。

相馬樓16
竹久夢二美術館

数多くの美人画を残した竹久夢二の大正ロマン溢れる作品が飾られている「竹久夢二美術館」は、相馬樓1階にあります。どのチケットでも自由に、貴重なコレクションを見ることができます。夢二はその昔、酒田を気に入り、相馬樓の前身と言われている相馬屋に3度も訪れたのだとか。カラフルで女性らしい絵の数々は、見るひとの心に彩りを与えてくれるはず。

いかがでしたでしょうか。知れば知るほど、老若男女を虜にし、現代の文化に舞う酒田舞娘。そして、誰でも足を運ぶことができ、その昔に栄えたあの時代にいる気分になれる相馬樓、文化の継承に励み、優美な舞に酔いしれる街、酒田を訪れ、新たな楽しみに触れてみてはいかがでしょうか。

<データ>
場所名:舞娘茶屋 相馬樓/竹久夢二美術館
住所:〒998-0037​ 山形県酒田市日吉町1丁目2-20
電話番号:0234-21-2310
交通:JR酒田駅から徒歩約20分 車で約5分、J庄内空港から車で約25分
営業時間:11:00~15:00(月・火・木・金)
定休日:※毎週水曜日、土日祝日、お盆、年末年始休業の受付はお休み
駐車場:(無料) 収容台数15台

ライター紹介

自己紹介
ニシ クレハ
母の故郷である酒田は、私にとっても第二の故郷。昔の花街の名残が残る日吉町付近は、お散歩していてもとても気持ちが良いです。実は酒田祭りでは花魁道中の経験も、そして昨年は大名行列で振袖を着せて貰いました。華やかな着物をきて歩くにはもってこいの酒田という街が大好きです。

自己紹介
サカモト リホ
アクティビティ、自然、歴史、夕日が好き。庄内は私のスキの宝庫で、仕事の合間をぬって色んなところに出かけています!好奇心が私の原動力!庄内のオモシロイところをみなさんにもシェアします〜!

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