県内一の落差63mの滝が目の前に!
玉簾の滝でマイナスイオンを浴びる

山形県は日本一“滝”が多い県だってご存じでしたか?
国内には約2500の滝があるといわれていますが、そのうちの230もの滝が、山形県にあるんです。
そんな滝の名勝地・山形県には、「飽海(あくみ)三名爆」といわれる素晴らしい滝があります。
かつて山形県が出羽国だった頃、今の遊佐町と酒田市にあたる地方は「飽海郡」と呼ばれていました。その三名爆を代表する存在である、落差や幅・水量ともに迫力たっぷりの玉簾(たますだれ)の滝に行ってきました!

滝へつながる参道には奇石がごろごろ


酒田市の市街地から、日向川(にっこうがわ)の上流に向かって車を走らせると、だんだんと山深くなっていきます。
玉簾の滝への案内看板にしたがって道を進むと、「産直ららら」という直売所と駐車場が見えてきます。ここが、玉簾の滝へのスタート地点です。

「産直ららら」の駐車場に車を置いて、ここから玉簾の滝まではゆっくり歩いて約10分。滝の前には御嶽神社(みたけじんじゃ)が祀られていて、滝のまわりは神社の境内です。鳥居をくぐって参道を歩き、滝へ向かいます。

滝への道は、コンクリート舗装された道と、砂利道の二通り。
歩きやすい道がいいという方、小さな子ども連れの方、棚田の景色を楽しみたい方はコンクリートの道へ。
森の参道の風情を感じながら、変化のある道のりを楽しみたいという方には砂利の道がおすすめです。今回は砂利道から滝へ向かいます。

一つめの鳥居をくぐると、野草が茂る緑豊かな景色が広がります。しばらく行くと、しめ飾りがかかった三つの奇石が見えてきました。

一つめは、左手に見えてくる「ぽんぽん石」。この石を、ほかの石で年の数だけ叩くと願いが叶うといわれています。取材日も、子どもが興味津々にぽんぽん石を叩く可愛い姿がありました。何十回と叩かなければならない人は、序盤で疲れてしまわないようにご注意を(笑)。

ぽんぽん石
もう一つ、左手に見えるのは「座禅石」。かつてこの地を訪れ、ゆかりが深いとされている弘法大師が、この石に座って座禅をしたといわれています。たしかに座禅ができそうな、平らな石です。

手前:座禅石 奥:目洗石
最後、右手に見える、苔むしたひときわ大きな石が「目洗石」です。
この石のくぼみには、つねに枯れない水があるといわれ、眼病に効くと言い伝えられています。鳥海山麓にはきれいな湧き水が多いからか、水にまつわる伝説や言い伝えが多いような気がします。

さらに進み、川にかかる橋を超えると杉林に入り、二つめの鳥居が見えてきます。

きらめく水粒! 滝つぼの間近で、全身に滝のミストを浴びる

二つめの鳥居をくぐると、御嶽神社の社が見えてきます。
その横には、ご神木の立派な杉の大木が。なんと幹回りは5m30cm! 樹齢は約800年と推定され、いかにも昔からこの一帯を見守ってきたご神木という感じです。

すでにその奥には、ド迫力の滝がちらちらと見えますが、はやる気持ちを抑え、まずは御嶽神社にお詣りしてご挨拶を忘れずに。

さあ、お詣りをすませると、いよいよ玉簾の滝です!

森の中に突如ぽっかりひらけた空間に現れる大きな滝!
かなりの高さからまっすぐに注ぐ、絶え間ない水の流れが、目の前いっぱいに広がります。落差63m、幅5mの滝は、迫力がありながらも、どこか繊細な印象。ごうごうと力強い滝というより、さらさらとたおやかな滝です。

滝からこぼれる水しぶきは、太陽の光を受けると、きらきらと宝石のようにきらめいて、本当にきれい。小さな粒のダイヤモンドがたくさん連なっているように見えます。
この輝きを見るためには、やはり晴れた日に行くのがおすすめです。

さらに滝に近づいてみると、急にひんやりとした空気と滝のミストに包まれます。
この滝の面白いところは、滝つぼの近くまで行けるところ。足元に気をつけながら、滝に近づいてみると、水がはるか上のほうから落ちてくる様子や、滝つぼにそそぐダイナミックな光景を目の当たりにすることができます。

滝から発せられるミストを全身に浴びて、気持ちいい~! 心も体も洗われて、浄化されていくような気分になります。

滝の背後に見える黒っぽい整然とした岩は、約1500万年前、まだ東北地方が深い海の底だった頃に海底で冷えて固まった溶岩だとされています。
鳥海山の土台も、この頃につくられたと考えられています。う~ん。壮大な地球の歴史を感じるなあ。

名付け親は弘法大師。空海とゆかりの深い滝と神社

この「玉簾の滝」は、今からおよそ1200年前に弘法大師が名付けたといわれています。

あるとき、弘法大師は出羽国を訪れて村々をめぐり、日向川をさかのぼってきました。日がすっかり暮れてしまい、人々が住む村がどちらの方向にあるのかわからなくなってしまったところ、水音が聞こえてきました。

音のするほうへと向かうと、突然目の前に滝が現れました。弘法大師は、この滝は人々の生活を助ける大切な水源であると考え、今までの感謝と、これからも人々のためになってくれるようにとの願いを込めて、一晩中お経をあげました。

すると翌朝、朝の陽光が滝に降り注ぐと、弘法大師の祈りに応えるかのように、滝の水が一斉に光り輝いたといいます。
その様子を見て感動した弘法大師は、「ああ、なんと美しい玉すだれ」と感嘆の声をもらしたとか。この時から、「玉簾の滝」と呼ばれるようになったそうです。

玉簾の滝の前にある御嶽神社は、弘法大師(空海)の開祖と言い伝えられています。滝も神社も、弘法大師とのゆかりが深いパワースポットなのですね。

産直らららに立ち寄り、地元グルメを味わうのもあり

玉簾の滝を見て、駐車場に戻ってきたら、地元の名産の直売所「産直ららら」に立ち寄るのもおすすめです。地元の野菜を販売していたり、山菜そばなどの軽食が食べられたりします。

今回も帰り際に小腹が空いたな……ということで立ち寄りました。山形名物の玉こんにゃく、鳥海高原ヨーグルトは絶品でした。ドライブ前の休憩に最適です。

夏の玉簾の滝はもちろんですが、春の新緑、秋の紅葉とともに眺める滝もまた格別です。
また、ゴールデンウィークやお盆の時期にはライトアップが行われるそう。陽光にきらめく滝とは一味違った、より幻想的な風景が楽しめます。ライトアップ期間は、産直らららも営業時間を延長してやっているそうです。

さらに、真冬のもっとも寒くなる1月中旬から2月にかけては、滝全体が凍る氷瀑(ひょうばく)が見られます。(ただしその時期、産直らららは営業していないのでご注意を! また、参道の除雪は行われないので、かんじきなどが必要です)

四季を通じていろいろな表情を見せる、玉簾の滝。季節を変えて、何度も足を運んでみるのも楽しいかもしれません。

〈データ〉
【住所】山形県酒田市升田字大森 map
【入場】見学自由
【交通】平日にバス利用の場合は、JR羽越本線酒田駅10時31分発の庄内交通バス観音寺行きで26分(500円)、八幡(やわた)総合支所前で下車。八幡総合支所前11時50分発の酒田市福祉乗合ぐるっとバス升田行きで27分(100円)、升田下車。升田バス停より滝までは約700m、産直ららら経由で徒歩17分。午前の往路は他に適当な便がないので、このバスの利用を推奨。帰路は升田発16時14分のぐるっとバスやまゆり荘行きに乗車すると、八幡総合支所前で16時50分発の庄内交通バス日本海総合病院行きに乗り継げる。酒田駅着は17時16分。ただし、庄内交通バスのこの路線は土日祝休日の場合、運行が夕方の1便しかないため、観光には不向き。土日祝休日は車での観光をおすすめする。
車 日本海東北自動車道酒田みなとICから約30分
【駐車場】普通車47台、大型車4台/無料
【ライトアップ】ゴールデンウィーク、お盆(※毎年、日程は異なる)
【備考】玉簾の滝は例年、1月中旬より凍結。玉簾の滝までのアクセス道路は、冬期間は土日祝休日のみ午前中に除雪。平日の除雪はない。滝への参道は除雪されないので注意。産直らららも冬期間は閉鎖。使用できるのはトイレのみ。産直らららの営業期間は4月下旬から11月中旬の土日祝休日。営業時間は午前10時から午後4時まで(ライトアップ期間中は午後9時まで)。
https://www.city.sakata.lg.jp/sangyo/kanko/shizen/tamasudare.html

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