鳥海山・出羽三山などに囲まれ、その伏流水と最上川など豊かな水に恵まれ、米どころと言われる庄内。鶴岡市大山地区では江戸時代から現在まで、日本酒造りが盛んに行われてきました。大切に造られた米と、日本酒と、漬物は相性が抜群です。
さらに、寒冷地の庄内地域では、冬は野菜が採れないため、野菜と同じ食物繊維を保つことができる漬物が、保存食として漬物が重宝されてきました。
漬物離れが進んでいる昨今。家庭の食卓にも漬物が並ぶことが減ってきています。一方で、健康志向や栄養素のバランスが取れる食事が今注目されています。漬物はダイエットに重要な腸内環境を整えてくれる働きがあります。
今回は100年余りの月日を経ても、同じ製法で漬物を造り続ける、地元では知らない人はいない、老舗漬物屋さん「つけもの処本長(ほんちょう)」とおすすめ漬物5選をご紹介します。
「良質な酒粕」と「在来野菜」に恵まれた、この場所ならではの素材を使う
古くから酒造りが盛んな鶴岡市の大山地区。つけもの処本長はこの地で100年余り、山形産在来野菜にこだわり、酒粕も庄内のものを使い続ける老舗の漬物屋さんです。
本長という名前は、初代の名前に由来しています。初代は本間長右衛門(ほんまちょうえもん)という名前で、大阪・灘の酒蔵へ修行に行ったそうです。大阪で酒粕を使った漬物といえば奈良漬ですが、もともと酒造りの勉強のために大阪に行った長右衛門が、奈良漬に魅了され、良質な酒粕と豊富な在来野菜がある大山でも漬物が造れるのではないか、それをやってみようということで、家に戻り、漬物屋を始めたそうです。
そして、豪雪地の庄内地域では、冬場に新鮮な野菜が取れないので野菜と同等の食物繊維を摂取するために漬物が重宝されてきました。
鶴岡市では50種類以上の在来野菜が確認されています。在来野菜とはその土地特有の気候や地理的条件を利用して栽培されている野菜のことで、他の土地で育てることは難しい、この土地ならではの野菜です。栽培方法とともに継承された作物の豊富さから、ユネスコ食文化創造都市に認定されています。今日まで大切に受け継がれてきた鶴岡の食の魅力です。
本長でも温海かぶ、民田なす、外内島きゅうりなどの鶴岡の在来野菜を使った漬物を作っています。
創業当初から変わらず受け継がれる桶と製法、本長の本間さんが語る漬物論。
本長で使用している桶は寛政10年から手直しを繰り返し、同じものを使用しているそうです。親から子へ、子から孫へ、受け継がれてきました。桶を使う漬物作りは温度変化が少なく、踏込みしやすいという利点があるそうです。このような桶をたくさん持っているのは、昔、酒蔵をやっていたなごりだそうです。
桶屋さんがもういないので、改修はこれで最後になるかも、もう桶は使わなくなるかもと本長の本間光廣会長は少し寂しそうにおっしゃっていました。
寛政の時代から同じ桶を使い続け、漬物を漬けるすべての工程は手作業で行われています。その光景を目にしてからは、漬物を食べるたびに、本長の従業員の方々を思い出し、一口一口を味わって食べるようになりました。
つけもの蔵ツアーで学ぶ、食物繊維が豊富な漬物の整腸作用。
日本人に不足しがちなビタミン類が豊富にとれる漬物。極寒の中でも漬物を漬けている人たちの肌や手はつるつるです。
女性の肌の美しさを全国47都道府県別に分析し、化粧品会社ポーラ(東京)による「美肌県グランプリ2021」にて山形県が総合2位に選ばれました。漬物は美肌大国山形県の一役を買っているのかもしれません。
漬物が持つ植物性乳酸菌は過酷な環境下でも育つことができるため、人の胃酸や消化液にも負けず、生きて腸まで届くそうです。野菜を漬物にすることで便秘解消や免疫力UPの効果が期待できます。漬物には水に溶けない不溶性の食物繊維がたくさんふくまれています。本長の漬物蔵ツアーでは、庄内の多彩な旬の野菜と、本長独自の漬物へこだわりをご教授いただくことができます。
庄内は寒冷地域のため、昔から保存食が重宝されました。浅漬けが普及し、人気になっても、本長では粕漬け、塩漬けも続けているそうです。浅漬けは素材を楽しむものであるが、日持ちしないため長期間の保存が困難。長い冬を凌ぐ必要がある庄内地域には向かないという理由があるそうです。粕漬け、塩漬けを貫く本長ですが、一人前に塩振りができるようになるまでは最低5年かかるそうです。あまりの大変さに「漬物は男子一生分の仕事に足るもの」と言われているそうです。
「減塩の時代と聞くと悲しい気持ちになる。」と話す本長の会長、本間光廣さん。元々、冬場の野菜不足を補うことを目的として作られた漬物。生野菜の持っているビタミンが変わらないまま長期保存することができます。漬物にすることで食物繊維が増え、腸の働きを活性化することができ、免疫力が増えます。若者は漬物などの和食離れが進んでいますが、つけもの蔵ツアーに参加し、実際に漬物を漬けている姿を見たり、お話を聞くと、改めて漬物の効力を認識することができます。
<データ>
漬物蔵の見学ツアー
要予約制
時間:9:00〜16:30
料金:無料
見学所要時間:30分
詳しくはHPをご覧ください。
http://k-honcho.co.jp/factory/
(参考)化粧品会社ポーラ(東京)による「美肌県グランプリ2021」
https://www.pola.co.jp/special/bihadaken/
本間社長が試行錯誤し編み出した変わり種「蔵王クリームチーズ」の魅力
「どうやったらより多くの人に、特に若い人に漬物を食べてもらえるだろうか。」本間光太郎社長が試行錯誤した先に辿り着いたのがチーズと粕漬けのコラボレーションだったそうです。コクと旨味のあるチーズは蔵王山麓に広がる蔵王酪農センターの中にある、ナチュラルチーズの工場で作られたものを使用しています。漬物=和食という従来のイメージを払しょくする製品として確かな手ごたえを感じた本長の自信作。プレーンの蔵王チーズ粕漬(白)の味のほかにも、酒粕をより熟成させた深い味わいの蔵王チーズ粕漬(黒)、2種類の味噌をブレンドし、味噌床に漬け込んだ蔵王チーズ味噌漬け、クリームチーズと瓜の粕漬をあわせ、ディップスタイルでも楽しめる瓜粕漬入りチーズなど様々なチーズの漬物が開発されています。
ただ、伝統を引き継いでいくだけではない。従来の製法を守りながら、新しく改良を重ね続ける本長だからこそ、地元の人たちに愛され続け、選ばれ続けているのだと感じます。
漬物のお土産5選
実際に食べてみておいしかった冬の漬物の5選をご紹介します。下記はあくまで主観のおすすめですので、ぜひ自分のお気に入り漬物に出会っていただきたいです!
【第5位:民田茄子 からし漬】
三百年以上前から鶴岡で栽培されている在来野菜の民田茄子。柔らかい民田茄子の食感と口に入れるとからしの鼻につーんと来る感覚がクセになります。開封後、数日おくとからしの辛さが少し落ち着き、食べやすくなります。
満天⭐︎青空レストランで新米に合うお漬物として紹介されました。
100g・1袋 販売価格: 368円(税込)180g・1袋 販売価格: 648円(税込)
360g・1袋 販売価格: 1,536円(税込)
【第4位:ごはんみそ】
お米が格段に美味しくなるご飯味噌。本長の漬物職人が食べていた賄い漬け。濃厚な味噌と漬物のシャキシャキ感がご飯とよくあい、箸が止まりません。
170g・1袋 販売価格: 486円(税込)
【第3位:近江漬】
青菜を細かく刻み白しょうゆで漬けた山形を代表する冬の漬物。素朴な味なのですが、やみつきになってしまい、いつもパクパク食べてあっという間になくなってしまいます。
250g・1袋 販売価格:648円
【第2位:蔵王チーズ粕漬(白)】
新鮮な生乳とクリームから作られたソフトタイプのナチュラルチーズ「蔵王チーズ」を本長独自の粕床に漬け込んだ新感覚おつまみ。日本酒はもちろん、ワインのお供にもなります。不織布で包まれた酒粕は捨てるのがもったいないので魚につけて焼いたり、鍋に隠し味として入れ、再利用することがおすすめです。お土産や贈り物に喜ばれること、間違いなし!
80g・1袋 販売価格:897円
【第1位:温海かぶ甘酢漬】
鶴岡の焼け畑で栽培した温海かぶは皮が薄く、パリっとした歯触りが特長。程よい甘酸っぱさがクセになります。もう冷蔵庫に数袋は必ず常備しておくほど。夜寝る前に明日も温海かぶが食べたい!と感じるくらい虜になっています。
250g・1袋 販売価格:648円
本長の年代別お土産ランキング
20代 蔵王クリームチーズ ピクルス
30代 蔵王クリームチーズ 無臭ニンニクたまり醤油
40代 蔵王クリームチーズ ピクルス 藤沢かぶたまり漬け
50代 蔵王クリームチーズ からし漬 ピクルス
60代 粕漬 ごはんみそ みりん漬け
70代 粕漬 味噌良漬
庄内のおススメを販売する「庄内くう港サイト」でも「本長」の漬物をご購入いただけます。
https://shonai-kuko.com/
<データ>
場所名:つけもの処 本長
住所:997-114 山形県鶴岡市大山1-7-7 Map
電話番号:0235-33-2023
交通:庄内空港から車で15分、JR鶴岡駅から車で15分
営業・開園時間:8:30~16:30
定休日:年末年始
入場料:無料
駐車場:あり
URL:http://k-honcho.co.jp/
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