世界的に珍しい1人の写真家:土門拳の
専門美術館で絶対に見逃せないものとは?

最近、周りに「一眼レフカメラを買って、写真を趣味にしたい」とか、「高カメラ機能のついたモバイルを買ったから、写真を上手に撮りたい」という人が増えている気がします。
昔に比べて、誰でも簡単に写真が撮れるようになったためか、逆に、本当に上手な写真家の作品をもっと見たいという思いも強くなってきました。
どこかに凄い写真家はいないかなと思っていたら、実は酒田市にはとんでもない写真家がいたんです。

昭和を代表する写真家・土門拳

その名は土門拳(どもん・ けん)。数々の賞を受賞した昭和を代表する写真家で、『絶対非演出の絶対スナップ』など独自のリアリズム論のもと、報道写真や寺院仏像など日本の伝統文化を独特な視点で切り取った作品を発表してきた人物です。

そんな土門は生前、7万点の全作品を故郷酒田市に寄贈。それに応え、酒田市が1983年に開設したのが土門拳記念館。なんでも、1人の写真家をテーマにした写真館は日本初で世界的にも珍しいのだとか。
加えて、2009年には旅行ガイドブックとして世界的に権威のある『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で二つ星に認定。日本で二つ星に格付けされた数少ない美術館のひとつになっているそうです。

そんな、美術館とスゴ腕の写真家の作品を一度は生でみたい! と思い足を運んでみました。

酒田駅からバス20分。“芸術さんぽ”へ出かけよう


酒田駅から、るんるんバス酒田駅大学線で20分。バスに乗ると、市街地から離れた緑の多い場所へ到着。下車し、木々に囲まれた道を少し歩くと、正方形のブロックをきれいに積み上げたような建物が現れてきました。

脇には大きな池。究極に引き算されたようなシンプルな建物に、思わず入口を間違うほどでしたが、その佇まいに期待値が膨らんでいきました。美術館は谷口吉生という著名な建築家が設計したのだそうです。
重厚なドアを開いて入館すると、この日は「宝生寺 モノクロの光と影」「小寺巡礼 伝統の装飾・文様」「昭和の手仕事」が展示されていました。

圧倒的な立体感。写真が肉眼を超えている!?


広々としたメインフロアーには一畳ほどの大きな写真がずらり。
早速、写真を見るやいなや、その圧倒的な立体感に驚かされます。
見つめていると、静止しているのにも関わらず、今にも動いてきそうな錯覚に陥るんです。被写体に、まるで命が宿っているかのように感じてしまうほど。

そして、「ここ撮るの!?」と思わず言ってしまいそうな、独特な視点から切り出された写真。でも、じっくり観察していると新たな発見がいくつも現れて「なるほど、そういうことか」と不思議と納得してしまうんです。
土門の言葉で「写真は肉眼を超える」という言葉があります。作品に触れていると、なんとなく、その意味がわかったような気がしました。

刺激の後は癒やしの庭園で和みたい


ひと通りメインフロアーを見終わると、奥へ続く優しい光が差し込む廊下に出くわします。
誘われるように先に進んでいくと、左側に小川が流れていました。そして、何やらモアイ像のような物体が中央に。

気になって調べてみると、「土門さん」という作品で、深い親交があったイサム・ノグチという有名な彫刻家が、記念館の建設にあたって寄贈したそうです。他にも、この美術館には土門を慕った、多くの芸術家が友情の証として作品をプレゼントしたのだそうです。

廊下の突き当りを曲がると二つの部屋がありました。一つは愛用の品々が並ぶ記念室。そして、もう一つが企画展示室です。
この企画展示室がとっても居心地がよくて、イチ押しなんです。
大きな窓から見える庭園には、少し大きめの碁石が川の流れのように敷き詰められていて、見ているだけで心が和みます。この庭園は、華道草月流三代目家元勅使河原宏が手がけたそうです。

庭園の前には椅子が数脚あるのですが、この椅子がまた座り心地抜群。何時間でも座っていられます。そして、極めつけは絶妙な光の差し込み方。多くもなく少なくもない丁度いい光のソフトタッチが体を包んでくれます。美術館でこんなに癒やされたのは初めての経験でした。

余韻を楽しむウォーク。読みかけの本も持って

満足気に美術館を後にし、最後に池の周りを歩きました。さっきまでいたところを少し離れて余韻を楽しむのはなかなかいいものです。
聞けば、この池の周りには無数の紫陽花が植えられていて、6月から7月にかけて目を楽しませてくれるのだとか。ここは散歩するだけでも価値のある場所です。

訪れてみて、この美術館には2つの側面があると感じました。
一つは「刺激」。土門が撮影した写真には、見る者の感性にノックなしに飛び込んでくる強いメッセージがありました。
そして、もう一つは「癒やし」。メインフロアーを抜ければ、そこには、アート、光、水が見事に調和した癒しの空間がありました。
相反する二つの感覚を味わえるのが、この美術館の最大の魅力です。

帰り際、適度に運動した脳と体は素直になった気分。なんだか、ベンチに座って本が無性に読みたくなりました。今度は本を持っていこうと思います。
みなさんも、読みかけの本を片手に、土門拳記念館をゆっくりと訪れてみるのはいかがでしょうか。

<データ>
【住所】酒田市飯森山2-13 map
【電話】0234-31-0028 (FAX兼)
【交通】JR酒田駅よりるんるんバス酒田駅大学線で20分(100円)、土門拳記念館下車すぐ
【開館時間】午前9:00~午後5:00
※入館は16:30まで
【入館料】通 常:一般430円 高校・大学生210円 小中学生無料
特別展:一般800円 高校・大学生400円 小中学生無料
【休館日】4月~11月 無休
※展示替えのため臨時休館する場合あり
12月~3月 毎週月曜日
※月曜祝日の場合は、翌火曜日が休館
年末年始
【駐車場】あり

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