目次
① 在来作物とは
② 在来作物温海カブとは
③ 杉伐採地の地ごしらえと焼畑
④ 温海カブの収穫と再造林作業
⑤ 焼畑あつみかぶのブランディング
⑥ 【体験レポート】一度は経験したい!漬物作り体験
⑦ 温海カブの漬物購入方法(オンラインサイト)
① 在来作物とは
特定の地域で、世代を超えて育てられ続け、栽培者によって種苗の保存がされている野菜のことです。「生きた文化財」とも言われ、地域の知的財産として大切に受け継がれています。
当サイトでは、以前にも在来野菜について紹介させていただきました。
【庄内旅型録】『こんな野菜は見たことがない! 農家が守り続けた庄内の在来作物たち』
山形県内には在来作物が多く現存しています。山形県の中でも庄内は在来作物の確認されている種類が一番多い地域です。庄内地域に初めて来た時、産直に並ぶ初めて見る野菜の数の多さに驚きました。今回は在来野菜「温海カブ」に焦点を当て、作られる背景や林業との連携、この農法が守られ続ける所以について紹介します。
② 在来作物温海カブとは
400年の昔から、温海カブは地質を生かした自然農法で作られてきました。江戸時代の往来物や覚書に庄内の産物として記され、漬物用野菜として珍重されていた「温海カブ」。この赤紫色のかぶは山の傾斜地などを利用した土壌に、火を入れて畑を作る焼畑農法で栽培されています。
鶴岡市温海地域、種の原産地である一霞(ひとかすみ)集落の土壌は約800年前に発生した温海岳の噴火による火山灰土でミネラル分豊富な土壌をもたらしています。温海地域の森林面積は総面積の約9割を占めており、年間降水量が1,800mm~2,200mm とスギの生育に適しています。平地の少ない温海地域では古くからスギの伐採後に焼畑を行い、かぶの収穫後に植林を行うサイクルによって生計を立てる焼畑農法が受け継がれてきました。焼畑を行うことで灰によってミネラル分が増加する作用が働き、火を入れることにより地表の雑草や病害虫も焼けてしまう殺菌作用があることから、おいしいかぶを作ることができます。
移住した当初につけもの処「本長(ほんちょう)」さんを訪問し、鶴岡の在来野菜の歴史について学びました。【庄内旅型録】『漬物が食べたければここに行け!鶴岡の老舗店 つけもの処「本長」』
その際、現在も受け継がれている資源循環型の焼畑自然農法があることを知りました。夏の暑い日に杉の伐採地一面を焼き、そこにかぶを植える、400年以上続く自然農法があると聞き、実際に見れる日を半年以上とても楽しみにしていました。実際に見学させていただいた温海町森林組合が取り組む、森林資源の循環利用の取り組みの中で行われている焼畑の様子を紹介します。
③ 杉伐採地の地ごしらえと焼畑
焼畑に活用する伐採跡地は、雪の少ない比較的海岸に近い場所を選定します。これは、温海地域の中でも海岸部は山間部に比べ気温が高いことから、焼畑作業をかぶの収量等が安定するお盆過ぎに行うことができ、さらに降雪が遅いことから12月中旬頃まで収穫が可能だからです。
焼畑の準備作業ともいえる「地拵え(じごしらえ)」作業は、7月中旬から焼畑が行われる前まで、地表面の雑草の刈払いと、立木の伐採後に残った枝や葉っぱを地面から浮かす作業で、地表面の乾燥を促して燃えやすくなるよう整えます。また、隣接する林への延焼を防ぐため、境界に接した枝葉を除去して幅5m以上の防火帯を作ります。
火は上部から火を下ろしながら焼くことで、枝葉や地表面はじっくりと時間をかけて焼かれることで雑草の繁殖を抑え、殺菌作用の効能とスギ枝葉等の灰が肥料となることで、無肥料・無農薬栽培の高品質な「焼畑あつみかぶ」の栽培が可能です。また、焼畑を行うことにより植林後の地拵え作業が不要となり、さらに初期の下刈作業の省力化が図られます。
焼畑は、8月下旬の晴天が3日程度続き、風がほとんど吹いていない日を選び行われます。温海地域の一般的な農家では、5アールから10アールほどの面積を焼畑しますが、温海町森林組合ではその20倍ほどの1ヘクタールの山林を焼畑します。20人ほどの作業員が山火事にならないよう、ゆっくり、ゆっくり山の上から火を下ろして焼いていきます。灼熱の太陽の元、過酷な作業です。
種まきの前に、燃え残った木の枝など取り除き「地ならし」を行います。そして、自然の肥料となる白い灰が残った土がまだ熱い状態で、種を満遍なくまきます。これを「は種(はしゅ)」といいます。種は10日ほどで発芽し、葉の大きさは3センチほどになります。1ヶ月ほど経つと草丈は15センチほどに成長し、白い灰に覆われた畑は一面鮮やかな緑色に姿を変えます。このころに、草刈りや間引きを行います。
参考【焼畑あつみかぶブランド力向上対策協議会HP】:四百年の歴史とともに焼畑自然農法が育んだ焼畑あつみかぶ物語
④ 温海カブの収穫と再造林作業
播種から60日ほど、10月上旬から大きくなったかぶの収穫が始まります。雪が降り始める12月までこの作業が続きます。傾斜地で転がらないように這うように作業を行い、15kg〜20kgのかぶを背負い運びます。収穫されたかぶは丁寧に水洗いし、出荷されます。
収穫は、雪の降り始める12月まで続きます。収穫作業と並行して、次の世代へ森林を引き継ぐスギ苗の植付作業が行われます。
⑤ 焼畑あつみかぶのブランディング
このロゴマークを見たことはありますか?このロゴは、温海カブのブランド化に取り組む「焼畑あつみかぶブランド力向上対策協議会」で、品質を守るために次の6つの条件を満たしたかぶのみ使用することができます。
・栽培地域は鶴岡市温海地域内で栽培されたこと
・山林、原野または原野化した農地で栽培されたこと
・品種は温海地域在来品種の「温海カブ」であること
・原産地にある一霞集落で生産された種子のみを使用すること
・自生している草木を刈り払い、焼畑を行い、栽培すること
・栽培した場所を再利用する場合は4-5年待って栽培すること
このロゴマークは温海で育った焼畑栽培の証です。このマークがついたかぶや漬物は、道の駅「あつみ」しゃりん等で購入できます。
⑥ 【体験レポート】一度は経験したい!漬物作り体験
今回は小学生と一緒にかぶの収穫・漬物づくり体験をさせていただきました。一般の方でもかぶの収穫を体験することができます。
漬け物作り体験のご予約はGreen Blueあつみの公式HPをご覧ください。世界が驚いた食文化!【期間限定】無農薬の焼畑あつみかぶで絶品漬け物作り体験
温海カブの肉質は緻密でやや硬く辛味があるのが特徴です。甘酢漬けにするとパリッとした食感にツーンとした辛味がやみつきになります。あつみ地域ではかぶ収穫の期間限定で無農薬の焼畑あつみかぶで漬け物作り体験をすることができます。ここで手順を簡単に説明します。(手順は一例です)
(1)まずは畑から採ってきたかぶをよく洗い土を取ります。
(2)かぶをくしぎり(一口大)にカットします。
※漬けたあとに切るという方法もあります。
(3)かぶ(1kg)を袋に入れて、5倍酢(24g)、砂糖(134g)、塩(24g)を合わせてよくもみます。
(4)重石をして1-2日漬けます。かぶがしんなりしてきたら重石を外し、冷蔵庫で数日漬けたら完成です!
⑦ 温海カブの漬物購入方法(オンラインサイト)
庄内地区の漬物店、スーパーには温海カブの漬物が並んでいます。温海カブを食べたいけれど、庄内に来ることは難しい。という方は、「山形・庄内地方より旬の食材をお届け:庄内くう港ショップ」をぜひ、ご利用ください。一度食べたらやみつきになること、間違いなし!ぜひご賞味ください。
ご注文はこちらから→本長 温海かぶ甘酢漬け
ライター紹介
サカモト リホ
アクティビティ、自然、歴史、夕日が好き。庄内は私のスキの宝庫で、
仕事の合間をぬって色んなところに出かけています!
好奇心が私の原動力!庄内のオモシロイところをみなさんにもシェアします〜!
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