霊場・湯殿山の神仏を祀るパワスポ
大日坊の御朱印帳には葵の紋がある!【山形・鶴岡】

古代より山岳信仰の聖地として人々に尊ばれてきた湯殿山。
“言わずの山語らずの山”と言われ、湯殿山のことは人に話してはならない、聞いてはならないという厳しい掟があったほど。
現在も写真撮影は禁止という、まさに神秘のベールに包まれた霊場。明治初期までは女人禁制の地でもありました。
その湯殿山から神仏を勧請(かんじょう)し、誰でも参詣できるように建てられたお寺があります。それが瀧水寺大日坊です。

弘法大師空海により1200年前に開創

このお寺、正式には湯殿山総本寺瀧水寺大日坊(りゅうすいじだいにちぼう)と言います。

弘法大師空海によって、大同2(807)年に開創されたと伝えられ、空海自作の御本尊や真如海上人(しんにょかいしょうにん)の即身仏が祀られている寺院としても有名です。さらに、徳川将軍家とも深い縁があったとか。長い歴史を誇る隠れた名刹なのです。

大日坊のある大網は、山里にある小さな集落です。
大網へは、鶴岡市内から山形自動車道を庄内あさひICで下り、国道112号線を山形市方面へ。大網橋を越えるとすぐ左側に「湯殿山大日坊(瀧水寺大日坊)」の案内板が見えてくるので、看板に従って左方向へ進みます。

田や森に囲まれた道をしばらく行くと、かやぶき屋根の仁王門が見えてきます。鎌倉時代の弘安2(1279)年の建築と言われ、仁王門としては国内最古。
山形県の文化財に指定され、正面左右には風神雷神の像が、その奥には運慶作の仁王像が鎮座しています。いきなり最初から、歴史に名を残す仏師の名前が出てきましたね!

大日坊は明治8(1875)年の火災によって、その堂宇のほとんどを失いましたが、この仁王門だけは焼失を免れました。

日本で一番古い仏像がある!?


仁王門をくぐり、細い参道を進むと本堂が見えてきます。本堂の入口で受付をします。拝観料は大人500円。ご祈祷を受けることもできます(5000円から)。

説明をじっくり受けながら、本堂内の仏像や徳川将軍家からの奉納品、即身仏などを見て回るのには、少なくとも約60分の時間が必要です。歴史的価値を持つものにたくさん出会え、何度も驚かされます。

現在の貫主は第95世。歴史好きで、祀られている仏像や展示品の説明の中には、歴史ミステリー的な逸話が出てくることもあり、その話にたびたび驚かされます。

御本尊は弘法大師空海作の秘仏・胎金両部大日如来(湯殿山大権現)。
御開帳は丑(うし)歳と未(ひつじ)歳の6年毎に。現在では目や鼻などの形もわからないほどすり減っている古い仏像だそうです。

また徳川幕府3代将軍・家光が奉納したという前立仏金剛界大日如来もあります。

通常の参拝で見られるのは、変化百体観音や徳川将軍家ゆかりの展示品、そして本堂をぐるりと回るように置かれた仏像など。中には1000年以上前の彫刻と推定される木版や波分大聖不動明王などもあります。
驚くべきなのは、古代中国で刻まれ、平安時代に日本へ渡来したと伝えられる金銅仏釈迦如来立像(国指定重要文化財)。貫主曰く「この像は、日本にある金銅仏の中で一番古いものと判明している」のだとか。これはすごい!

幾多の災害を乗り越え残った仏像たち


それにしても大日坊と徳川将軍家とは、どういうつながりがあったのでしょうか。

寺によると、3代将軍の座をめぐって家光と弟の忠長が天下を二分して争っていた時代、家光の乳母であったお福(後の春日局)は人知れず大日坊を訪れ、命懸けの祈願をしました。 しかし当時は、これを隠して2代将軍の病気平癒を表面上の理由にしたと伝えられています。

その後、家光はめでたく将軍となり、大日坊に大日如来を奉納。春日局による堂宇の再建なども行われていたそうです。大日坊は徳川将軍家全国七ケ寺の一つの祈願寺と定められました。

しかし、現代でも不便な山里のこの地に、江戸からはるばる春日局が本当に来たのでしょうか。歴史の謎は深まるばかりです。

徳川将軍家の祈願寺として繁栄した大日坊も、明治維新後の廃仏毀釈・神仏分離による迫害や火災、大暴風雨、地すべり、盗難など、長い歴史の間で数々の災難を受け、そのたびにさまざまなものを失ってきたと言います。

旧境内地は広大で、さまざまな堂や蔵などが建っていたそうです。現在地には昭和11(1936)年に移転。今に残る仁王門や仏像、徳川将軍家からの奉納品などは、本当に貴重なものなのです。

火災を免れた即身仏の不思議

明治8年の火災では、本堂とともに2体の即身仏も焼失しました。
唯一残った真如海上人の即身仏は、「入定(土中に入ること)後、息絶えてから千日後に掘り起こし、別に堂を建てて祀るように」という上人の遺言を、弟子たちが忠実に実行したことによって火災から免れました。

本堂で手厚く祀られるのではなく、雨風も漏れるような小さな堂にいることでひとり残った即身仏。他の寺で見られる即身仏と比べ、色白です。

「真如海上人の即身仏は、手合わせをした状態から力が抜けると自然になる手の垂れ方をしています」と貫主。息絶えるまで経を唱え、世の平穏を祈っていた証拠だと言います。

最後に、徳川将軍家の葵の紋が刻印された御朱印帳と御朱印(セットで1800円)をいただいて帰りました。貫主の奥さんが書いていると言う御朱印は、力強い印象です。

500mほど離れた旧境内地には、推定樹齢1800年の老杉「皇壇の杉」(山形県天然記念物)がそびえ立っています。根周り8m、幹囲約6m、高さ27mで、最近ではパワースポットとしても人気とか。

瀧水寺大日坊は、パワーが集まる場所なのかもしれません。

<データ>
【住所】山形県鶴岡市大網字入道11 map
【電話】 0235-54-6301
【交通】注連寺と同様に、JR羽越本線鶴岡駅より最寄りのバス停である大網への直通バスは、17時台と19時台の2本しかないので観光には不適。
現時点で路線バスを利用して行く場合は、鶴岡駅から庄内交通バス朝日庁舎行き(7時37分発)に乗車、終点の朝日庁舎(8時11分着)で鶴岡市営バス田麦俣行(8時30分)に乗り換えて12分、大網局前バス停下車後、徒歩20分。運賃は鶴岡駅から朝日庁舎まで770円。朝日庁舎から大網局前まで200円(ただし、乗り継ぎ前のバスの精算時に「乗り継ぎ割引券」を受け取り、乗り継ぎ後のバスの精算時に渡せば100円引きになる。逆方向も同じ)。
帰路は、大網局前発14時47分の朝日庁舎行きに乗車、朝日庁舎で15時10分発鶴岡バスターミナル行きに乗り換え。ただし、鶴岡市営バスは平日のみ運行。
朝日庁舎から瀧水寺大日坊までタクシー利用は、片道約20分(3300円前後)。朝日庁舎近くの落合ハイヤー(0235-53-2121 要予約)へ。
車 山形自動車道庄内あさひICより約15分
【拝観時間】 8時~17時(受付16時30分まで)
【拝観料】 大人500円、中高生400円、小学生300円
【定休日】 なし
【駐車場】 50台/無料
http://www.dainichibou.or.jp/

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