山伏の文化が育んだ出羽三山の精進料理。
貴重な山の恵みを存分に味わう

出羽三山は羽黒山、月山、湯殿山の総称で、全国でも有数の修験の山。羽黒山の山頂にはこれら3つの山の神を合祭した社殿、三神合祭殿があります。
その羽黒山の頂上にある斎館でいただく精進料理はこの羽黒山の文化と自然がぎっしりと詰まったもの。江戸時代は「華蔵院」という寺院だったという築300年の趣のある建物の中で、精進料理をいただきました。

山菜をふんだんに使った羽黒の精進料理

斎館(さいかん)がある羽黒山の頂上に向かうには、樹齢300年を超える杉並木の石段2446段を歩いて登るか、頂上まで車で行くか、いろいろな方法があります。羽黒山山頂までは鶴岡市内からバスも運航しています。

今回はお天気もよいので、隋神門から表参道の石段を登って斎館を目指すことにしました。
石段の途中には見所がたくさん。五重塔や樹齢一千年を超す爺杉、庄内平野を見おろせる休憩所など。いろいろな場所に立ち寄りながら、樹林の間を1時間ほど歩きます。

表参道の三の坂を登りきると左手に斎館の看板が見えました。

大きな門の中に、とても趣のある建物がひっそりと建っています。築300年を超える建物だけあって、中に入るとさらに時を重ねてきた重厚感を感じます。
精進料理はこの斎館(羽黒山参籠所)でいただきます。

出羽三山の精進料理は、羽黒の山伏の食文化と京都などの寺院の精進料理の技法が融合してできた出羽三山独自の料理です。

京都などの精進料理では、野菜を肉や魚に見せかける「もどき」料理が多く見られますが、出羽三山の精進料理は山菜や茸など、この山で採れた自然の素材をたっぷりと使った料理で、まさにここだけでしか食べられない食材でできている精進料理なのです!

修験道では、生命の源そのものである山で採れた食材を食することも修行の一つと考えられていました。

その心が出羽三山を訪れる客人をもてなす料理にも込められるまさに生きるための料理が、おもてなしの料理へと変っていったのです。
あの松尾芭蕉もこの地を訪れたときには、精進料理を食べたと言われています。

山伏たちは、季節毎の食材をそのまま生で食べていたそうです。
それが、京都の精進料理の技法がこの地に伝わり、やがて火を通す調理法や塩漬けの保存方法などが取り入れられるようになって、出羽三山独自の発展を遂げたそうです。

出羽三山の精進料理。正確な数はわかりませんが、使われている山菜や野菜の数は40、50種類以上になるのだとか。

よく使われる食材は、月山筍、ばんけ(ふきのとう)、なめこ、胡桃。
月山筍とは、細い筍で根元が大きく曲がることからネマガリタケとも呼ばれ、独特の風味と甘みと歯ごたえがあります。

また、天然のなめこは秋の終わりから冬の始まりにかけて、ブナなど広葉樹林の枯れ木、切り株に生えるのだとか。人工栽培のなめことは全然違うぬめり感と食感です。

こちらで使われる山菜は、代々、山菜を採ることを業にしてきた方たちが、今でも山に入って採っているそうです。
そしてそれを保存して次の季節にも食べるという、保存技術の高さにも驚かされます。

お山のエネルギーをいただく充実の御膳!

料理が運ばれてきました。いただいた献立は、「涼風膳(すずかぜぜん)」(5500円・税込)です。

涼しさやほの三日月の羽黒山

松尾芭蕉の句から名付けられたこの御膳は、杉並木に吹く涼風のように、遠方より訪れた客人の心身をねぎらい、喜んでいただこうとする「おもてなし」の心が表現されたものだそうです。

器がとても上品で、その器に載っている料理も一品一品の飾り付けが美しく、箸をつけるのがためらわれるほど。少しずつ、料理を口にするたびに、素材そのものの深い美味しさが身体に染み渡ります。

この日のメニューは、とんび舞茸と茄子の炒り煮。ごま豆腐のあんかけ黒ごまソース。いたどり、トマト、じゅんさいの甘酢。むきそば。だだちゃ豆豆腐。青みずの海苔巻き。丸茄子の出楽。ゼンマイと舞茸の炒り煮。草餅。赤みずのサラダ。からとりの長茄子ソース。青みずジェラート。ご飯。味噌汁。漬物。お抹茶。

メニューの書かれた紙の料理長の名前の上には、山味届人(さんみかいじん)の文字が。まさに、山の味を届けてくださっているメニューです。お山で採れたものは、お山で食べる。そしてお山のエネルギーをもらって帰っていただきたいという料理長の想いが伝わってきます。

料理の最後には、青みずで作られたジェラードと、お抹茶とお菓子も付いてきます。一品一品からお山のエネルギーを感じながら、満足感と満腹感でいっぱいに!

涼風膳は3日前までに予約が必要です。
肉、卵、魚類、乳製品などを一切利用しない1日限定30食の「月うさぎ膳」(2200円・税込)も3日前までに要予約とのこと。月うさぎ膳には出汁にも一切動物性のものを使わないので、出汁をとるのに2日間かかるのだとか!

国内だけではなく、海外でもとても高い評価を得ている出羽三山の精進料理。海外からのお客さんも多くいらっしゃいました。
鶴岡市はユネスコの食文化創造都市ですが、出羽三山の精進料理は、豊かな自然と人が育んできた、まさに鶴岡の豊かな食文化を象徴するひとつかもしれません。

<データ>
羽黒山参籠所「斎館」
【住所】山形県鶴岡市羽黒町手向羽黒山33
【電話番号】0235-62-2357
【交通】JR羽越本線鶴岡駅から庄内交通バス羽黒山頂方面行きで50分(1210円)、羽黒山頂下車徒歩5分
車 山形自動車道鶴岡ICから30分 庄内空港から40分
【定休日】なし
【予約】料理はすべて予約制。
http://www.dewasanzan.jp/publics/index/64/

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