地元の人しか知らない、いや地元の人でも知らなかった人がいるという、美しいエメラルドグリーンに輝く池があります。
それが、遊佐町(ゆざまち)にある丸池様(まるいけさま)。あまりの美しさに、池自体が「丸池神社」のご神体として信仰の対象になっています。
心を癒すパワースポットとして、最近注目を集めている神秘的な場所に行ってきました!
牛渡川の水面に揺れる、清流にしか見られない「梅花藻」
丸池様への最寄り駅はJR羽越本線吹浦(ふくら)駅。しかし、電車は上り・下りともに1時間に1本ほど。しかも、丸池様方面に行くバス路線もないため、車で行くのが便利です(徒歩の場合は吹浦駅から約20分)。
国道7号線から脇道にそれて、のどかな畑や田の中の道を行くと、田の脇に「箕輪鮭ふ化場 丸池・牛渡川」という案内看板が見えてきます。
その案内にしたがって、田んぼの間の道を進むと、やがて舗装道路の切れるあたりに「箕輪鮭漁業生産組合」の建物が。建物の前には、10台ほどの駐車スペースがあります。車を停めて、さっそく丸池様に向かいます。
駐車場から丸池様までは歩いて3分ほど。でも、この短い道のりにも、見逃せないポイントがあります。
歩く道すがら、左手に見えてくるのは牛渡川(うしわたりがわ)。この川に流れる水の100%が、鳥海山の伏流水です。川面は見たことがないほど澄み切っていて驚き! 濁りなど一切なく、川底までくっきりと見えます。
その透明な水に鮮やかに映える緑が「梅花藻(ばいかも)」です。清流にしか生えないといわれ、非常に珍しい水草です。
梅花藻の一番の見ごろは毎年6月下旬頃。その名の通り、梅の花のような、白くて小さい可憐な花を咲かせます。取材日は7月中旬でしたが、その名残があって、可愛い花がいくつか見られました。
春から夏にかけては、梅花藻が見ごろを迎えますが、秋から冬にかけては、鮭が遡上する様子が見られるようです。季節を変えて訪れるのも楽しいですね。
陽光を受けて表情を変える、エメラルドグリーンの丸池様
牛渡川を越えて森に入ると、一気に空気がひんやりとし、どことなく厳かで神聖なムードが漂います。
木がうねりながら茂る小道を進んでいくと、左手にいよいよ丸池様が見えてきます。丸池様の特徴である美しいエメラルドグリーンに、はっと息をのみます。
水面を見れば、澄みきった水に驚くばかり。丸池様は、池の底から湧き出る鳥海山の湧水のみをたたえていて、このように湧水のみを水源とする池は山形県内で唯一ともいわれています。
光の加減で、水面はエメラルドグリーン、コバルトブルーとさまざまな色に変化します。なぜこんなに幻想的な色に見えるかというと、水の透明度が高いから。透明度の高い水に太陽光が当たり、光の屈折や吸収の諸条件がそろうと、きれいなグリーンやブルーに見えるそう。丸池様はこの諸条件がそろった珍しい池なのです。
水底に倒木が沈んでいる様子が見えますが、これは水が冷たくて澄んでいるため、朽ち果てずに残るのだそうです。池の守り神の竜のようにも見えてきます。
池そのものがご神体。鳥海山大物忌神社の末社
丸池様のほんとうの名前は「丸池神社」といいます。池そのものがご神体として崇められてきました。丸池神社は、「鳥海山大物忌神社」の末社にあたります。
鳥海山大物忌神社は、鳥海山をご神体とし、山頂に本社、麓に2つの里宮があります。
活火山である鳥海山を鎮めるための祀りごとを行ってきたとされ、出羽国一之宮(出羽の国の中でもっとも格が高いとされる神社)として崇敬されてきました。
丸池神社は、そんな由緒ある鳥海山大物忌神社の末社、つまり本社に付属する関係の深い神社なのです。これは強力なパワースポットに違いない!
信仰の対象となっている池というだけあって、魚を獲ったりすることは禁止されています。地元の子どもは、ほかの池や森でいたずらをすることがあっても、丸池様にだけは絶対に悪さをしなかった、という話もあるようです。
古くから崇められ守られてきた丸池神社の森は、手つかずの豊かな原生林を残しています。この森は、遊佐町の天然記念物に指定されています。
池の魚はみんな片目!? 鎌倉権五郎景正の伝説
丸池様に住む魚はみんな片目である、という伝説があります。
これには、平安時代の武将・鎌倉権五郎景正にちなんだ言い伝えがあります。
東北地方の武士と源義家らが争った後三年の役で、源氏側に従っていた景正が、東北の豪族・安倍宗任(鳥海弥三郎)と戦った際、宗任に右目を弓矢で射抜かれてしまいました。
景正は右目に傷を負いながらも戦い続け、目を射抜いた敵を討ち取ったそうです。そして丸池様にたどり着き、ここで目を洗ったところ、池が血で真っ赤に染まり、それ以来、この池の魚はみんな片目になったとか。
そんな言い伝えが残っているのも、丸池様が昔から神秘の池として語られてきたことを表していますね。
丸池様の美しいエメラルドグリーンの姿を見るには、晴れた日の昼間、できれば午前中に行くのがおススメ。太陽の光がたっぷり出ている時を狙って行きましょう。
〈データ〉
【住所】山形県飽海郡遊佐町直世字荒川57 map
【入場】見学自由
【交通】JR羽越本線吹浦駅から徒歩20分
車 日本海東北自動車道酒田みなとICから約20分
【駐車場】約10台/無料