一度は食べたい庄内の郷土食「麦きり」を味わえる
おすすめのそば店3選

山形県民はラーメンも好きですが、じつはそばが大好き。外からお客さんが来た時は、知る人ぞ知るそばの名店などへ案内しておもてなしをするくらい。
そんな山形県でも、庄内には麦きりという名物があります。古くから伝わる郷土食として、そばと並んで地元の人たちから親しまれています。
今回は、そんな庄内の麦きりの魅力と、庄内に行ったら必ず足を運んでおきたいそば屋さん3店をご紹介します。

そばにはちょっとうるさい山形県民

山形のそばの特徴は、太くて硬めだということ。それだけにコシが強く、食べ応えがあります。よく噛みしめて食べるので、そばの味、香りを深く味わうことができます。
つゆは甘さ控えめで、醤油の風味とかつおぶしの香りが立ち込め、そばの味を引き立たせます。

そばが好きな人は、冬でもつゆと薬味で冷たいそばをずるずるっとすすります。冷たくないと、そばの味がわからないからです。

もちろん、温かいそばも人気ですが、冷たいそばか、温かいそばか、冬の寒い日には頭を悩ます人も多いようです。

それだけそば好きの多い山形県には、各地域に「そば街道」と呼ばれるおそば屋さんの集まるエリアがあります。県内外からおいしいそばを求める人たちが集まり、中には行列のできる名店も。

そば好きが高じてそば打ちセットを買ってしまうアマチュアも多く、それだけ山形県民のそばへのこだわりは強いのです。

庄内名物「麦きり」はうどんとどう違う?

そばは山形全域にありますが、庄内地方には「麦きり」という名物もあります。

古くから食べられていたという麦きりは、小麦粉を練って作られた麺。うどんと混同されがちですが、庄内の人は麦きりとうどんとは区別しています。

うどんよりも細く、そばのように冷たくしめて食べます。細くてつるつるとした舌ざわりですが、コシが強く、もちもちとした弾力もあります。食べてみれば、たしかにうどんとは違ったものに感じられます。

ただ、温かくしたものは「うどん」と呼んでいるお店が多いようです。麦きりは、やはり冷たくしめてこそ味わいがあるものと庄内の人は考えているのです。

庄内のおそば屋さんは、そばと麦きりとどちらもメニューに出しているところがほとんどで、両方を食べられる「合盛り」が人気。大人数で食べるときは、大きな一枚の板で、仲良くつつきながら食べるのが定番です。

庄内のおいしいそば屋さんに行ってみよう!

庄内にはおいしいそば屋さんがたくさんありますが、中でも特に人気のある店、隠れた名店などを厳選して紹介します。

■大松庵(だいしょうあん)

大松庵は、江戸時代、天明の大飢饉で多くの命を飢餓から救った鈴木今右衛門という篤志家が住んでいた古民家を移築してつくられました。

たいへん立派なお屋敷なのですが、まわりの木々に隠れているため、国道を快適に走っていると見逃してしまうかもしれません。近くまで来たら、道路沿いに出ている看板を見落とさないように注意してください。広い駐車場があります。

広々として解放感のある店内には歴史を感じさせる調度品が置かれ、とてもいい雰囲気です。日本家屋の静けさ漂う座敷席のおかげで、落ち着いた気持ちで食事に臨むことができます。

大松庵の麺は店主の手打ちです。舌ざわりがやさしく、みずみずしい麺でした。
そして、薬味はなんと生わさび! ほどよい辛みとさわやかな香りが、そばの香りをいっそう引き立たせてくれます。

そば、麦きりだけではなく、天ぷら、おにぎり、お餅、スイーツと豊富なサイドメニューもうれしいところ。味噌おにぎりを青菜で包んで焼いた「べんけいめし」や、栃の実から作られた「とちもち」などの郷土料理も食べられます。どれもつい唸ってしまうような逸品ばかりです。

目移りしてしまうくらいに豊富なメニューですが、頼みすぎにはご注意を!

(メニュー例)
・うす盛り(蕎麦/麦きり) 720円
・合のり 1030円
・べんけいめし 200円
・とちもち 180円

■寝覚屋半兵エ(ねざめやはんべえ)

寝覚屋半兵エは創業120年という、県内でも有数の麦きりの老舗です。

寝覚屋という一風変わった屋号ですが、その由来には2つの説があります。
ひとつは、寝る間も惜しんで麺づくりに精を出していた初代店主を評しての名称という説。もうひとつは、集落の人たちが夜なべ仕事で眠くなったときに食べる冷たい麦きりが目の覚めるようなうまさだったという説。

いずれが正しいにしても、寝覚屋半兵エの麺が絶品だということがわかるエピソードですね。

そんな寝覚屋半兵エのメニューは、そばと麦きりのみという、至ってシンプルなもの。麺づくりに家運を賭してきた老舗の自信が現れているようです。

合盛りは、3人前からになります。どうしても両方食べたいという人は、1人で2人前頼むしかないそうです。それでも、つるつる、ずるずるとあっという間に食べられるので、思い切ってそばと麦きりの両方を頼んでしまいましょう!

自家製という漬け物も特徴的でした。甘くてパリッとして、大変おいしかったです。食事で食べきってしまわずに少し残しておくと、そば湯のお茶請けとして食後の一服も楽しめますよ。

(メニュー例)
・ざる麦きり/ざるそば 各670円
・三人用 麦きり・生そば 2220円

■山茶屋(やまちゃや)

酒田と鶴岡を結ぶ海沿いの道、国道112号線を走り、ふっと現れた「山茶屋」の看板を頼りに細道に入ります。

車一台分の幅しかないひと気のない道がしばらく続き、「本当にこんなところにそば屋が?」とだんだん不安になってきます。人家も見えず、およそ飲食店など考えられないような辺鄙な場所です。

防風林に行く手を阻まれ、不安が最高潮に達したところで、突然視界が開け、広い敷地と立派なお屋敷が目の前に現れます。そこが山茶屋です!

山茶屋のおすすめは「天ざるそば」と「天麦きり」。もちろん、合盛りにしてもらうこともできます。コシの強い麦きりは絶品で、天ぷらとのセットは食べ応え十分でした。

天ぷらには、その時期の旬の野菜が使われますが、ハマボウフウというめずらしい葉物野菜が人気のようです。この地域でとれるセリ科の植物で、薬草としても利用されるとか。セリ科というだけあって苦味とクセのある香りが特徴ですが、天ぷらにするとそれがほどよく衣となじみ、絶妙な味わいになります。

「さすがに寒い日は温かいものを食べたい」という方のために、温かいそば・うどんも充実しています。
五右衛門風呂を模した釜の器で出される五右衛門うどん。肉と天ぷらが乗っかり、ねぎもふんだんに使われたボリュームたっぷりのオリジナルメニューです。

こちらの山茶屋。庄内空港から車ですぐ近くなので、離発着の前後に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

(メニュー例)
・ざるそば/麦きり 各800円
・天ざる/天麦きり 各1400円
・五右衛門うどん/そば 各1100円

<データ>
大松庵
【住所】山形県鶴岡市水沢行司免43-13 map
【電話】0235-35-4041
【交通】JR羽越本線羽前水沢駅より徒歩約15分。または鶴岡駅より庄内交通バスあつみ温泉方面行きで35分(590円)、新橋下車徒歩1分。
車 日本海東北自動車道鶴岡西ICより約2分
【営業時間】11時~15時
【定休日】木曜、金曜(祝祭日は営業)
【駐車場】あり/無料

寝覚屋半兵エ
【住所】山形県鶴岡市馬町枇杷川原74 map
【電話】0235-33-2257
【交通】JR羽越本線羽前大山駅より徒歩約30分。タクシーで約10分(1420円程度)。 または鶴岡駅より庄内交通バス湯野浜温泉行き(善宝寺経由)で30分(630円)、椙尾神社前下車徒歩2分。
車 日本海東北自動車道鶴岡西ICまたは庄内空港ICより約10分
【営業時間】10時~15時
【定休日】毎週水曜日・毎月第2火曜日
【駐車場】あり/無料

山茶屋
【住所】山形県酒田市浜中字七窪292-2 map
【電話】0234-92-2936
【交通】庄内空港よりタクシーで約10分(1330円程度)。
車 日本海東北自動車道庄内空港ICより約10分
【営業時間】11時~15時
【定休日】水曜
【駐車場】あり/無料

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