鶴岡を取材中にラーメンの話になったら、地元の人から聞かれました。
「琴平荘に行った? あそこは絶対に食べに行くべき。幻のラーメンと言われて、全国からお客が来ている超有名店ですよ!」
不勉強ながら、鶴岡にそんな有名なラーメン店があるとは知りませんでした。
そこまで言うなら行こうと車を走らせたら、本当に大行列。いやはや驚きました!
幻のラーメンと言われる理由
庄内空港から車で約25分、JR鶴岡駅より約30分の三瀬(さんぜ)海水浴場のそばに、連日大行列をつくっている噂のラーメン店「琴平荘(こんぴらそう)」がありました。
郊外にあり、決してアクセスが便利ではありませんが、開店1時間前にはすでに大行列ができていることも多いという人気店。混んでいるときは2時間以上の待ちになってしまうことも! ですが、工夫次第では順番を待つ時間も楽しめます。
「琴平荘」でラーメンが食べられるのは、なんと10月から5月まで。実は本業が旅館のラーメン店で、大のラーメン好きのオーナーが冬場の閑散期対策としてこだわりのオリジナルラーメンを開発し、昼に提供しはじめたところ、これは美味しいと人気が爆発したのです。
なので、夏場はラーメン店としては営業していません。
あまり知られていませんが、山形県はラーメンの1人当たりの消費量や1世帯あたりの外食費用、店舗数がそれぞれ全国第1位というラーメン王国。酒田ラーメンや米沢ラーメン、新庄のとりもつラーメンなど、人気のご当地ラーメンも数多くあります。
そんなラーメン激戦区の中で「琴平荘」のラーメンこそが1番人気と伝えるメディアも少なくはありません。全国放送のテレビ番組でもたびたび紹介され、その名は全国に知れわたっていて、大行列ができるのも当然でしょう。
多い日には500杯もの注文があると言います。タイミングが悪ければ駐車待ちになることもあり、あまりの行列に諦めて帰る人も。しかも期間限定で営業は11時〜14時のたった3時間。こういう状態ですから、なかなか食べられないと「幻のラーメン」と評する人さえ出ているのです。
大広間で寛ぎながら順番が待てる
琴平荘の外観はまさに旅館そのもの。その近くの路上は駐車する車であふれていて、駐車スペースを探すのも一苦労です。玄関を入ると、お客の靴がずらり。待っている人が玄関フロアにもいます。これって大丈夫なのと少し不安になりますが、まずは中へ。
琴平荘のラーメンは奥の大広間で食べます。最初に、個人あるいはグループごとに1組1枚で番号札をゲットしましょう(大人数の場合は要確認)。大広間の入口に番号札が置いてあります。番号札を持っていなければ、たとえ一番早く並んでいたとしても、席に着くことはできません。ちなみに取材班の番号は124番!
開店前でも入口のカーテンが開いていたら入館OK。通常は15〜30分ほど前に開きますが、悪天候や冬の寒い日などはお店の人の気遣いで1時間以上前でも入れることがあります。
琴平荘でラーメンを食べるには長時間待つことを覚悟。でもさすがは旅館です。大広間手前の右側に大きな座敷があって、ここを控えの間として開放しているのです。大広間に座って寛ぎながら、開店や順番を待つことができます。読書やスマホのゲームなどを楽しんだり、周りの人の迷惑にならない範囲で横になったりすることも可能。膝の弱いお年寄りなどは、廊下にあるイスやソファーに座って待つこともできます。路上や地下街の通路で待つことを思えば天国ですね。
順番が近づいたら会場の大広間後方にあるスペースへ移動。自分の番号を呼ばれたらすぐに席に着けるようにするとスムーズ。とにかく混んでいるので、お店側への配慮もお忘れなく。
待ち時間が長くなりそうなら、番号札を持って外へ出かけることもできるそうです。奇岩怪岩の変化に富んだ三瀬海水浴場は、海水の透明度が高くて美しいビーチ。周辺を散策するのも楽しいです。磯場もあり、中には釣りをして待つという強者もいます。その際には、店のスタッフにどのぐらい待つのか時間を確認してから出かけましょう。
麺の量はボリュームのある220g
自分の番号が呼ばれたら、案内された席に着きます。1組1テーブルで、1人でも相席はありません。メニューは中華そば700円、肉抜き中華(チャーシュー抜き)600円、チャーシューメン850円、メンマ中華700円、中華そば塩750円。
それぞれスープの味があっさりとこってりから選択でき、麺の硬さの加減や好みにより薄口にお願いすることもできます。
量が足りなかったら、半玉(110g)60円、一玉(220g)100円の替え玉でおかわりを。平日なら、麺の量が330gの大盛り中華そば800円と大盛チャーシュー麺980円がオーダーできます(平日の火曜・金曜は大盛り無料)。その他、メンマ100円や半熟味玉100円などのトッピング、ぶっかけ漁師めし130円などのサイドメニューも。時期や年によってメニューが増えるなど、変わることもあります。
レジ周りには、琴平荘ラーメン(しょうゆ・味噌)2食入り各540円などのお土産用の商品もあり、お土産メンマ300円・チャーハン用チャーシュー250円・味付け玉子100円などはお持ち帰りも可能。
2日前に予約すれば、つけ麺5人前3,250円・10人前6,000円のお持ち帰りもできます。せっかく訪れたのなら、来られなかった家族や友人・知人に、幻と言われるラーメンのおすそ分けするのもいいですね。
お待ちかねの一杯、気になるその味は?
食材にこだわりを持ち、手間暇をかけて作られているという「琴平荘」のラーメン。岩手県産の高級丸鶏や、地元産トビウオを下ごしらえ・天日干し・焼きとすべて自店で行なっているという自家製のアゴの焼き干し、鯖の稚魚の煮干し、豚などを使用して、丹念にスープを作っています。中太ちぢれ麺も、もちろん自家製麺。その上に、柔らかく煮込まれたチャーシュー2枚と、歯ごたえの良く味の染みたメンマ(自家製)、刻みネギ、そして大判の海苔が1枚乗ります。
チャーシューメンのこってりを頼んで味わってみました。テーブルに運ばれてくると、まずは魚介の香りがふわっと漂い、食欲をそそります。淡麗醤油で味つけられたというスープは丹念に作られているとだけあって魚介の臭みもなく、素材の旨味がバランス良く組み合わさっています。そこに、こってりには鶏油が加わって、コクをプラス。
同行の編集者があっさりのメンマラーメンを頼んでいたので、スープを一口もらって飲み比べてみました。あっさりは油が少ない分、魚介の味が引き立っているように感じます。
スープがよく絡む中太ちぢれ麺は、ツルツルもちもちで良い喉ごし。メンマ中華は極太と細い2種類の太さのメンマがたっぷり乗り、チャーシューメンならチャーシューが5枚になります。
味の染みたメンマや口の中でホロホロと崩れるチャーシューなど、一品一品が美味しく、それがみんな組み合わさったという中華そばは、実は贅沢なメニューなのかもしれません。
行列は苦手という方も、観光や休憩(あるいは読書やスマホゲーム)を組み込むなどすれば、待ち時間も我慢の範囲かも。待ったとしても、一度は食べてみて損のない絶品ラーメンであることは間違いありません。クラゲで人気の加茂水族館からも車で約12分です。
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住所 山形県鶴岡市三瀬己381-46 map
電話 0235-73-3230
交通 JR羽越本線 三瀬駅より徒歩約20分
またはJR羽越本線 鶴岡駅より庄内交通バス あつみ温泉方面行で50分(820円)、三瀬下車徒歩5分
車 日本海東北自動車道三瀬ICより約5分
営業時間 11時〜14時
定休日 木曜 ※6月〜9月は休業(旅館営業)
駐車場 旅館敷地内・周辺約50台(無料)